子守歌

薔薇色の、壷の形をした大気の底で
あなたは眠りについた。

旅立ちの前に、
八十年間の日々の気泡は
ひとつずつゆっくりと蒸発して、
あなたの魂の虹色の鱗に姿を変える。
その輝かしさに
万物は頭を垂れ、
両手を合わせて、
赦しを与え、赦しを乞う。

乳色の、ゆりかごの形をした大気に抱かれ、
あなたの魂は嬰児となる。

門出を祝福して、
季節を忘れた花々の蕾は
次々にほころんで、
あなたの魂を十文字に取り囲む。
その無邪気さに
万物は微笑み、
両手を合わせて、
無限の安らぎを約束する。

透明の、形のない大気のもとへ
あなたの魂は朗らかに発っていった。

取り残された
私の目は、東に沈む夕日に向かって
果てしなく腕をのばし、
大気に溶けたあなたの魂を見ようとしている。
その切なさに
大地はやさしく私を跪かせ、
あなたの魂の芳香を聞かせてくれる。

空っぽの、ゆりかごの形をした大気の中で
私の魂は両手を合わせて、
永遠の子守唄を歌い続ける。